2分、遅れます。

タイムリーでも、周回遅れでもない、思考の振りまき。

中東かく語りき_イエメンの憂鬱

ストラテジーペイジ 1/13付 イエメン-終えし希望- Yemen:Hope Has Diedより


昨今話題の(?)中東情勢より。

アラビア半島、スンニ派の盟主サウジアラビアの南にイエメンという国がある。

 

長年の政情不安、特にアラブの春以降、この国はサウジアラビア(スンニ) v.s.イラン(シーア)の代理戦争の地として機能してきた。

 

アラブの春の余波を受け、20年以上もの間国を統治してきた独裁者、サレハ(シーアの分派であるイスラム/ザイド派)が失脚し、アメリカ/サウジアラビアの推薦を受け後任となった、ハディ率いる国内のスンニ派セクトキャプテンシーを得た途端、国内のシーア派ゲリラ、"フーシ"がそれに激昂、サレハに忠誠を誓う前政権の中枢と結びつき、北部の首都、サナアを制圧しクーデターを遂げた。そして依然としてサナアはフーシにより統括されており、南部の中心都市、アデンに陣取るスンニ派過激組織、AQAP/アラビア半島アル・カーイダやハディ派政府軍と激しい抗争を続けている。

 

サウジアラビアは昨年4月頃からイエメンに向けて大規模空襲を仕掛け続けている。シーア派であるフーシは、その本尊のイランに多大な物資/軍事援助を受け、サウジの国境付近の油田地帯、ひいては国境付近のマイノリティ(多くはサウジ国内で迫害を受けるシーア派)を煽動し抗争を続けている。※イランは公的にはフーシへの援助は否定している。ただし、サウジ国境の治安が脆弱になればイランにメリットしか無いのは明らかであり、その上で"人道支援"という名目で、せっせと物資を運んでいる。

 

サウジがなぜこの国への空爆に拘るかといえば、表向きは、フーシに抑圧されている人民の解放というものだが、真意は、"対イラン戦争(シーア殲滅)に向けて、空軍兵器の性能の程を試しておきたい"というところだろう。

 

サウジは空軍力でしかイランに勝る手立てがない。踏み込んで言えば、彼らは決して自国軍(陸軍)を強化することが出来ない。豊潤な石油利権は確かにサウド家と、その統治下にある国民の生活基盤を万全にした。しかし、それがもたらす"人民総生活保護"状態は確実にサウジ国民の精神を退廃させ、国家に忠誠を尽くす軍人の士気を著しく堕落させた。その代わり、カネにものを言わせて買いそろえた最新鋭航空兵器はピカピカで、今や西側陣営も羨むほどの贅沢戦争を展開することも可能だ。

 

彼らの最も恐れるシナリオは、このままフーシを始めとしたシーア派勢力が膨張して国境付近に軍が張り付けにされることだ。そうなればペルシャ湾岸の警備は手薄となり、イランのお家芸である、湾岸からの高速ボートによる上陸作戦により何十万ものイラン陸軍の上陸を許すことになる。

※先のイランとの国交断絶においてスーダン/バーレーンを真っ先に囲いこんだのもそのためかもしれない。スーダンにはイランの対外工作員"クッズ"が暗躍しており、紅海側から攻め入れば、イスラムの聖地であるメッカは目と鼻の先である。バーレーンでも、クッズによるスンニ派政府への反乱デモ煽動が数年前に起きておりサウジ側は肝を冷やした。

 

イランもサウジのそうしたマヌーバは百も承知で、イエメン情勢には気を揉む。

サウジにとっての救いが南部アデンの油田地帯がスンニ派・セクトのAQAPに牛耳られていることであり、イエメン第3の都市、サナアとアデンの丁度中間に位置するタイズ市をフーシが奪取した報を受けると、サウジ軍のインフラ破壊が始まると見たイランは、サウジ側の空爆を"慎重さの欠如"と非難し、またサウジ側もイランのフーシへの武器提供を停止するよう命じ、非難の応酬となった。

 

イエメンの政党多数は今でもサレハのパトロンであり、西側/サウジはそれが気に食わない。対するイランが親玉のシーア派陣営はスンニ派から迫害を受けるサレハをかくまうことでシーア派の一致団結を求め、混戦は泥沼の様相を呈している。捉えようによっては先行きはシリア以上の絶望状態だ。

 

イエメンではシリア同様、内戦により何万もの難民が輩出されており、失敗国家の烙印が押されて久しい。大国の宗派対立による、代理戦争、壮大な"実験"、それが公然と行われているのがイエメンの現状と言える。



※以上、半ば知的道楽でやっている9割方受け売りの中東分析でした。誤謬などがあれば遠慮なくどうぞ。恐らく、「あ、すんません」としか言えませんが。